近代の農業と環境保全型農業

農業は人の力と、生態系の力がなければできるものではありません。時代とともに農業も進化し生産効率を重視して化学肥料や農薬などを使うことでとても効率的になりましたが、それは同時に土や土地、環境などへ負担をかけることとなってしまいます。このままでは土は弱り作物の育ちにくい痩せた土地になるばかりか、畑から出る二酸化炭素や水田の土壌から放出されるメタンなどの温室効果ガスで地球温暖化にも繋がってしまいます。そこで国が推奨している環境保全型農業へ着目しました。

環境保全型農業とは「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業」です(環境保全型農業の基本的考え方より)。

環境保全型農業関連情報:農林水産省 (maff.go.jp) 参照

温室効果ガスを減らす おかいもの

小笠原農園では農林水産省と協力し、環境負荷低減の取り組みを星の数でわかりやすく表示する「温室効果ガス削減見える化」実証を行っています。

  • 環境に配慮した水管理の工夫
  • 栽培期間中に化学農薬を50%以上削減した特別栽培米
  • 炭で炭素を土にためる土づくり

で、温室効果ガス排出の少ない米づくりに取り組んでいます!

小笠原農園-温室効果ガス削減見える化

削減率69%の根拠について

  • 中干し期間の延長のみ : 約 19%削減
  • 青い森エコ炭の施用 (200kg/10a を5年間。木質由来)のみ:約18%削減
  • 堆肥の施用(2000kg/10a)のみ:約8%削減

その他、化学農薬や化学肥料の削減等も組み合わせて、全体で10aあたり約69%の削減となります。

 

全体の削減率は、取組内容の単純な足し算の結果とは異なります。 組み合わせて取り組むことで削減率が高く(良い)なります。また、選択する県やバイオ炭の種類(黒炭、白炭、もみ殻くん炭、木質由来など)、それぞれの資材の施用量によって異なります。

Environmental Conservation

農家目線の温暖化対策から環境保全型農業へ

2000年代になり地球温暖化は世界共通の課題となっていく中、一見関係が無いように見える農業の分野でも温室効果ガスの排出量は多く、環境配慮について対策が練られていました。農業の分野で主に排出される二酸化炭素やメタンの排出量を、いかにして減らすことができるでしょうか。

Q:畑や水田から温室効果ガスが発生するって本当?

A:畑からは二酸化炭素が、水田からはメタンが発生します。これらは温室効果ガスです。これらのガスのもとをたどると空気中の二酸化炭素につながります。すなわち、野菜やイネなどの農作物は、二酸化炭素を吸収して、実や葉・茎・根などに炭素の形で蓄えます。農作物を収かくした後、畑や水田に残される葉や茎・根は、土に混ぜられます。土の中には、目に見えない小さな生き物がたくさん住んでいて、これらを分解するときに、畑では土のすき間にある酸素を取り入れて二酸化炭素が発生します。いっぽう、水田の土には水がたくさんあるため、酸素はほとんどありません。このような酸素が少ないところでは、メタンが発生します。

地球温暖化と農林水産業 (affrc.go.jp) 参照

このような仕組みから農家の人々は、光合成(植物が二酸化炭素を取り入れ酸素を出す)があるのだから、農作物を作ることで自分たちが出してしまった温室効果ガスはプラスマイナスゼロになる、という考え方をしました。しかしそれだけではなく、土に炭を混ぜ込むことでさらに環境に配慮した農業になるのではないかと考え、改めて取り組むのです。(小笠原農園の取り組みへ続く…) 2011年のCOP17(気候変動枠組条約第17回締約国会議)で日本政府は地球温暖化対策への効果的な取り組みとして「世界低炭素成長ビジョン」(世界全体で低炭素成長を実現するための提言)を公表します。そこからまた農業の分野でも温暖化対策として低炭素へ向け改めて取り組むのです。

CO2 Neutral

小笠原農園の取り組み

農業生産の取り組みとして、低農薬・低肥料で作物を作り、また牛たちからもらったフンを合わせます。さらにそこに炭を合わせ、土台となる土を作っています。
なぜ炭を入れるのか。前述にもありますが、まず米作りにおいて水田からのメタンガス排出は農家にとって耳が痛い話です。メタンガスの発生を抑制するためには、土壌中のメタンガスを作り出す細菌の活動を抑える必要があります。この細菌にエサが届く前に、別の微生物たちにエサを分解してもらえば細菌にエサは届かず活動を抑えられるので、その別の微生物たちを増やし分解能力を高める目的で炭を入れているのです。炭は微生物を増やしながら土壌環境をアルカリ性へ戻す作用もあります。この炭は、つがる市木造の青い森國土保全協同組合さんが、農地環境保全のために製造・販売している土壌改良に最適な資材となっており、切り捨てられた間伐材を細かく砕いて作った炭です。


こうして出来た天然素材で安心の土を使って米を作り、稲刈り後の籾殻を牛たちにあげ、牛たちからまたフンをもらい堆肥と合わせさらに炭を合わせる、これは農業の持つ物質循環機能です。
そして畑で栽培する農作物においても、この炭を土に合わせることで、畑から発生する二酸化炭素を炭が炭自身の中に固定してくれるため、畑から排出される二酸化炭素の排出量も抑制されるのです。